エコーガイド下 ハイドロリリース注射
肩こりや腰痛などの痛みや末梢神経性の痛みに対して、疼痛部位がはっきりしている場合にエコーガイド下ハイドロリリース注射(Fascia(ファシア)リリース注射、筋膜リリース注射)を行っています。
- ハイドロリリースとは
痛みの原因には様々なものがあります。1つの原因として、生活習慣や何らかの原因によって筋肉、筋膜に異常を来たし、炎症や癒着が起こり、組織の伸張性や滑走性の低下が起こるために痛みが生じるという考えがあります。その部位の水分量の低下も起こっていると考えられています。Fascia性の痛みと表現されます(Fasciaとは筋膜などを含む結合組織の総称で靭帯、腱、脂肪組織なども含まれます)。同様に、その部位の末梢神経も障害されることによって、痛みが生じていると考えられています。疼痛部位にエコーを見ながら針を進め薬液を注入していきます。ハイドロリリースがなぜ有効なのかまだ完全には解明されていませんが、癒着を起こした筋膜、筋肉、末梢神経などを、生理食塩水を基本とした液体でリリースする(ほぐす、癒着をはがす、水分を与える)ことによって痛みを和らげる効果があると考えられています。
- いろいろな痛みの原因
ただし、痛みの原因は局所のFascia性の痛みだけではありません。例えば椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛や骨折などによる外傷性の痛み、内臓から来る痛みなどがあります。そのようなものを見逃さないために、まずは通常の診察を行わせていただきます。診療時間の短縮のために、もし他院で行ったレントゲンやMRIなど最近のものがあればお持ちいただけると助かります。ハイドロリリースが全く効かない場合は、局所のFascia性の痛みではない可能性が高くなります。そのような意味では診断的治療の1つともいえます。
- エコーを用いる利点
近年、運動器を見るための高性能なエコーが発売されたことで、以前はMRIを撮らなければ見えなかった深い部分の筋肉組織やある程度の太さの神経、血管組織が外来で容易に見えるようになりました。以前からのエコーを用いない疼痛部位に対してのトリガーポイント注射は、浅い部分しか安全に行えないことが多かったですが、エコーを見ながら行うことによってより深い部分のリリースを神経、血管を避けながら比較的安全かつ正確におこなえるようになりました。
- 使用する薬剤
局所麻酔薬よりも生理食塩水のほうが除痛効果に優れていたという論文報告があり、当院でも生理食塩水を基本にごく少量の局所麻酔薬を加えたものを基本的に使用しています。
- 名称について
筋膜リリース、ファシアリリースなどと呼ばれていましたが、最近ではこのエコーを用いた注射手技をハイドロリリース(Hydro-release)と呼ぶことが多くなっています。
ご説明
- 注射だけは行っておりません。まずは通常の診察・検査を行わせていただきます。そのうえでハイドロリリース注射の適応があると思われた場合に行います。適応がないと思われる場合はお断りすることが有ります。
- 他の患者様の待ち時間があまり長くならないために1回につき数か所までとさせていただいております。
- リスクとしてはまれですが感染症、出血、神経障害、局所麻酔薬アレルギーなどがあります。
- 1回の治療効果は様々です。1回でかなり良くなる。1日から数日は有効だった。何回か行ううちに少しずつ良くなるなどです。あまり効果が無い場合もあります。効果は保障されたものではございません。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
料金
- Fascia性の痛みで、痛みの場所からまわりに放散する痛みやしびれがある場合は、保険診療のトリガーポイント注射(80点、薬液代は別)の適応と考えられ、エコー下にハイドロリリースを行います。この場合は生理食塩水にごく少量の局所麻酔薬を混ぜて用います。トリガーポイント注射は本来1日に付1か所のみの適応です。3か所目からは1か所に付1000円とさせていただきます。
- 生理食塩水のみのハイドロリリースをご希望の場合は保険適応がございません。自由診療となり、注射料は1か所に付1000円いただきます。初診料は別途(初診時は健康保険で診察や検査を行います)になります。2回目からの診察料は注射料とは別に1000円となります。
2019.11.1