抗リウマチ薬の種類、特徴、副作用について(2021.8.15)

 

治療は薬物療法が基本です。できるだけ早期に抗リウマチ薬による治療を開始し、関節の炎症を抑えて関節が壊れるのを防ぎます。

ご覧ください  当院作成「抗リウマチ薬について、基本的な考え方」

生物学的製剤、JAK阻害薬などの登場で治療薬の選択肢は広がっています。各国のガイドラインでは、はじめに使う薬としてメトトレキサート(MTX)が推奨されています。合併症などにより使用困難な場合は、経口の免疫調整薬か免疫抑制薬のタクロリムスなどをまず使用します。効果判定は薬によって1~3ヵ月程度で行いますが、効果が不十分な場合には、薬の増量を行ったり、可能であれば注射剤の免疫抑制薬である生物学的製剤(BIO)もしくは経口の免疫抑制薬であるJAK阻害薬などの使用を考えます。薬の有効性には個人差があり、あまり効かない場合はほかの薬に変更していきます。

関節リウマチによる関節の炎症(滑膜炎)があると、そこから関節の軟骨を痛める成分が出て関節を壊してしまいます。この関節の腫れをとり、痛みを和らげ、関節の変形を防いで日常生活の質を保つことが治療の目標になります。薬の副作用に注意しながら、また薬ののコストについてもご相談しながら治療を行っていきます。

以下に抗リウマチ薬の特徴、副作用などを列記しました。これらの抗リウマチ薬に加えて、ステロイド薬(経口・注射)、消炎鎮痛薬などを適宜組み合わせて治療をしていきます。

 

【抗リウマチ薬の種類】

1.免疫調整薬

ブシラミン(リマチル、ブシレート)、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)、イグラチモド(ケアラム)、金製剤(シオゾール)など

2.免疫抑制薬

① 経口薬・・・メトトレキサート(リウマトレックス、メトレート)、タクロリムス(プログラフ)

② 生物学的製剤(バイオDMARDs)

炎症性物質への抗体やレセプター製剤の注射薬です。現在9種類以上あります。皮下注射の薬と点滴の薬があります。

  • TNFという炎症を引き起こすタンパク質の働きを抑える​・・・エンブレル、ヒュミラ、シムジア、シンポニー、レミケード、エタネルセプトBS、アダリムマブBS、インフリキシマブBSなど
  • IL-6という炎症を引き起こすタンパク質の働きを抑える・・・アクテムラ、ケブザラ
  • T細胞という白血球の働きを抑える ・・・オレンシア

③ JAK阻害薬

新しい種類の経口薬です。JAK(ジャック)とは免疫細胞の中で、炎症を引き起こすシグナルを伝える役割を担います。その働きを抑えることで炎症を妨げます。

・・・ゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ、リンヴォック、ジセレカ

 

【それぞれの抗リウマチ薬の特徴、起こりえる副作用について】

それぞれの薬の副作用は起こらないことがほとんどですが、時々起こります。副作用の種類はまれなものも含めればかなりのものがあります。

《どの薬にも共通する起こりえる副作用・免疫調整薬、免疫抑制薬に共通》

アレルギー反応(湿疹、発熱など)、アナフィラキシー反応(強いアレルギー反応のこと、じんましん、呼吸困難、血圧低下、腹痛などの症状が組み合わさって出ます)、気分不快、消化器症状、口内炎、肝機能障害、腎機能障害、骨髄抑制(白血球減少など)、間質性肺炎(薬剤性のアレルギーによる肺炎、空咳、呼吸苦、発熱などの症状。レントゲン、CT検査で診断できます)などがあります。

また、各薬のさらに詳しい情報はメーカーサイトなどにリンクを張りましたのでご参照ください。

 

1.免疫調整薬

① ブシラミン(リマチル、ブシレート)

 1日50mg~300mg服用します。副作用としてタンパク尿(正常では無し)がありますが、服用を中止すればほとんどの場合数ヶ月でタンパク尿は治ります。しかし、ごくまれに腎炎になることがあります。腎炎を来した場合は専門病院に入院し治療が必要になることがあります。タンパク尿の早期発見のため、毎回尿検査をさせていただきます。そのほかに味覚障害、脱毛、爪の変色などが報告されています。

詳しい情報⇒リマチルを服用される患者さんへ患者向け医薬品ガイド

② サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN

 1日250mg~1000mg服用します。副作用として肝機能障害、白血球減少などに注意が必要です。服用開始から2週間程度で血液検査をさせていただきます。光線過敏症が報告されています。

詳しい情報⇒アザルフィジンENを服用される患者さんへ

③ イグラチモド(ケアラム)

 1日25mg~50mg服用します。ワーファリンを服用されている患者さん、消化性潰瘍のある患者さんは服用できません。腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状、肝機能障害が多いと報告されています。間質性肺炎にも注意が必要です。

詳しい情報⇒患者向け医薬品ガイド

④ 金製剤(シオゾール)

 1回10mg~25mg筋注します。維持量としては10~25mg / 2~4週、当院では総量1000mg程度までとしています。タンパク尿、間質性肺炎などに注意が必要です。毎回尿検査をさせていただきます。

詳しい情報⇒薬のしおり

 

2.免疫抑制薬

免疫抑制薬は関節リウマチ治療の中心となっています。発症早期から使用することで関節の炎症や変形が全く見られない寛解を達成できることが多くなりました。

《各免疫抑制薬の副作用について》

副作用は必ず出るというものではなく、むしろ何も副作用がないことの方が多い印象ですがゼロではありません。前述した《どの薬にも共通する起こりえる副作用》に加えて、

免疫抑制薬は特に感染症への注意が必要になります。鼻咽頭炎、上気道感染、気管支炎、帯状疱疹などがあります。重い感染症(結核,敗血症,肺炎など)を生じる場合もあります。薬を始める前に、B型肝炎、C型肝炎、結核、真菌症、非結核性抗酸菌症などがないか血液検査、胸部レントゲンで検査させていただきます。それらが体に潜んでいる場合があり、免疫抑制薬の使用で活性化し発症する場合があるからです。もし怪しい場合は大学病院などで精密検査をお願いしております。

また、まれですが薬剤性の悪性リンパ腫も報告されています。悪性リンパ腫は発症部位によっていろいろな症状が出ますが、薬剤性の場合は免疫抑制剤の中止によって半数は治癒します。しかし、抗がん剤による治療が必要になる場合があります。悪性リンパ腫が疑われたときは大学病院の専門科にご紹介させていただいて検査治療を行っていただいています。

ご覧ください ⇒ 当院作成「免疫抑制薬使用中の注意点」

 

(1)経口免疫抑制薬(以前からある薬)

① メトトレキサート(リウマトレックス)

メトトレキサートは関節リウマチ治療の中心的な薬です。アンカードラックとされ、日本リウマチ学会、ヨーロッパリウマチ学会、アメリカリウマチ学会の抗リウマチ薬の推奨でも第1選択薬とされています。週に1回、1日から2日に分けて2mg~16mg(1錠=2mg)服用します。通常は4mg~8mgから開始し副作用に注意しながら増量します。しかし、使用を控えた方が良い場合もあり、例えば重度の腎機能障害、間質性肺炎、活動性の感染症、白血球が3000未満、肝機能障害(AST,ALTが正常の3倍以上)、過去に薬剤性の悪性リンパ腫になられた場合などがあります。

詳しい情報⇒メトトレキサートを服用する患者さんへ(日本リウマチ学会)、当院作成のメトトレキサート(リウマトレックス、メトレート)の服用について

② タクロリムス(プログラフ)

1日1回、0.5mg~3mgを夕食後に服用します。タクロリムスも有効な免疫抑制剤で、比較的副作用が少ない印象です。メトトレキサートに比べて高価になりますがジェネリック医薬品も発売されています。メトトレキサートとの併用も有効な治療法です。副作用として、血糖値上昇、腎機能悪化(副作用による血清クレアチニン1.8mg/dlまでの上昇であれば、薬を中止して改善するという報告があります)、血圧の上昇などに注意が必要です。またほかの薬との飲み合わせに注意が必要になります。妊娠、授乳中の使用について高い安全性が認められています。

詳しい情報⇒タクロリムス錠を服用される関節リウマチの患者さんへタクロリムス添付文書(併用注意薬など記載) (「あゆみ」製薬の参考文書をリンクさせていただきましたが、プログラフ、他の会社製造のタクロリムス錠・カプセルも同様です。)

 

(2)生物学的製剤(バイオDMARDs)(注射剤:点滴と皮下注射があります)

生物学的製剤とは、関節の炎症反応を起こす炎症性サイトカインという体内の物質を、最新の遺伝子工学で作られたタンパク質である抗体を利用して直接抑える薬です。生物学的製剤の登場で関節リウマチの治療の選択肢が増え、有効なことも多く治療が大変進歩しました。生物学的製剤は高額であることや、感染症などに注意が必要なことなどデメリットもありますが、大変有用な治療薬であると思います。もちろん効き方には個人差がありあまり効かないこともありますが、その場合はほかの薬に変更をお勧めします。

副作用は何も起こらない場合もよくありますが、やはり注意が必要です。

《どの薬にも共通する起こりえる副作用》《免疫抑制剤の副作用》に加えて、

皮下注製剤の場合は注射部位反応(紅斑、かゆみ、発疹、出血、腫脹)、点滴製剤の場合はインフュージョンリアクションというアレルギー反応(発熱、発疹、血圧低下、ショックなど)が出ることがあります。

やはり感染症に特に注意が必要です。また、まれですがループス様症状,脱髄疾患,心不全、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全、腸穿孔などにも注意が必要です。

当院では、生物学的製剤を始める前に大学病院などの呼吸器内科を受診していただいて、肺炎や間質性肺炎などがないかの確認をお願いしています。

《それぞれの生物学的製剤について》

(i) TNFという炎症を引き起こすタンパク質の働きを抑える

① エンブレル(エタネルセプトBS)

1998年にアメリカにおいて世界で初めて認可された生物学的製剤です。抗体ではなくTNFαの受容体製剤です。標準使用量は週に50mgですが半量投与も認められています。25mgを週に1~2回皮下注射、または、50mg週に1回皮下注射。自己注射可能。妊娠、授乳中の使用について高い安全性が認められています。メトトレキサートの併用は必須ではありませんが、可能であれば併用した方が良く効くことがわかっています。

詳しい情報⇒あゆみ製薬のエタネルセプトBSの参考文書をリンクさせていただきましたが、先発品のエンブレルも副作用は同様です。以下の説明パンフをご参照ください。エタネルセプトBS「MA」による治療を受けられる患者様へ適正にエタネルセプトBS「MA」をご使用いただくために患者向け医薬品ガイド

② ヒュミラ(アダリムマブBS)

TNFαへの抗体製剤です。完全人型抗体となります。40mgを2週に1回皮下注射。効果が弱い場合は80mgを2週に1回に増量可能ですが、この場合はメトトレキサートなど他の抗リウマチ薬との併用は認められていません。自己注射可能。メトトレキサートの併用は必須ではありませんが、可能であれば併用した方が良く効くことがわかっています。寛解達成後にメトトレキサートを中止しても寛解が維持できる例の報告があります。

詳しい情報⇒ヒュミラ情報ネットアダリムマブBS 薬のしおり

③ シムジア

TNFαへの抗体製剤です。抗体の断片であるFab領域にポリエチレングリコールを結合(ペグ可)させることによって、分解されにくく、動物実験では炎症が起こっている部位に集まりやすい性質が認められています。分子量が小さく、投与部位反応が少ないと考えられています。1回400mgを初回、2週後、4週後に皮下注射し、その後200mgを2週に1回皮下注射。症状が安定すれば4週に1回 400mg皮下注射でも可能。自己注射可能。妊娠、授乳中の使用について高い安全性が認められています。

詳しい情報⇒シムジア.jp

シンポニー

TNFαへの抗体製剤です。ヒト型抗体です。投与間隔が4週に1回の皮下注製剤であることが特徴です。クリニックで注射を受ける場合4週に一度の通院頻度ですみます。メトトレキサート併用の場合は50mgを4週に1回皮下注射。効果が弱い場合は4週に1回100mgに増量可能。メトトレキサートを併用しない場合は4週に1回100mg皮下注射。自己注射可能。メトトレキサートの併用は必須ではありませんが、可能であれば併用した方が良く効くことがわかっています。

詳しい情報⇒シンポニー.jp

⑤ レミケード(インフリキシマブBS点滴静注用)

TNFαへの抗体製剤です。点滴製剤です。TNFαと結合する部位がマウス由来の蛋白質でその他がヒト由来の蛋白となるキメラ型モノクローナル抗体です。メトトレキサートの併用が必須です。投与時のアレルギー反応であるインフュージョンリアクションがやや多い印象で、時々経験するため注意が必要です。強いアナフィラキシー反応(発熱、血圧低下、腹痛、皮疹など)が起こる場合があります。また、遅発性過敏症として点滴後3日以上過ぎてから、発熱、発疹、筋肉痛などの症状があらわれることがあります。初回投与後から数えて、2週後と6週後、4回目以降は3回目から数えて8週ごとに点滴します。点滴時間にかかる時間は当院では約3時間です。体重1kg当たり3mgを1回の投与量とし点滴静注します。なお、6週の投与以後、効果不十分又は効果が減弱した場合には、投与量の増量や投与間隔の短縮が可能です。これらの投与量の増量や投与間隔の短縮は段階的に行います。体重1kg当たりの1回の投与量の上限は、8週間の間隔であれば10mg、投与間隔を短縮した場合であれば6mgとなります。また、最短の投与間隔は4週間となります。

詳しい情報⇒レミケードインフリキシマブBS点滴静注用

⑥ ナノゾラ

TNFαへの抗体製剤です。一般の抗体にみられるFc領域という部分がなく、3つのたんぱく質が結合した形で、TNFαに選択的に結合し炎症を抑えます。投与間隔が4週に1回の皮下注製剤であることが特徴です。クリニックで注射を受ける場合4週に一度の通院頻度ですみます。

詳しい情報⇒ナノゾラによる治療を受ける患者さんとご家族の方へ

(ii) IL-6という炎症を引き起こすタンパク質の働きを抑える

① アクテムラ

ヒト化抗IL-6抗体製剤です。IL-6という炎症を引き起こすサイトカインの働きを押さえます。日本で研究開発された薬です。血液検査での炎症反応の指標であるCRPの産生を抑えてしまうので、リウマチが悪くなったときや感染症にかかったときにCRPの値が上がらず注意が必要です。また白血球の減少がしばしば見られます。162mgを2週に1回皮下注射します。効果不十分な場合には、1週間に1回まで皮下注の投与間隔を短縮できます。自己注射可能。点滴静注用製剤もあります。体重1kgあたり 8mgを100~250mLの日局生理食塩水に加え希釈し、4週間隔で点滴静注します。点滴にかかる時間は約1時間です。点滴で行う場合は、投与時アレルギーであるインフュージョンリアクションに注意が必要です。メトトレキサートの併用は必須ではありませんが、可能であれば併用した方が良く効くことがわかっています。

詳しい情報⇒アクテムラの治療を受ける患者さんへ

② ケブザラ・・完全ヒト化抗IL-6抗体製剤です。IL-6という炎症を引き起こすサイトカインの働きを押さえます。1回200mgを2週間間隔で皮下投与します。自己注射可能。状態によっては1回150mgに減量可能です。

詳しい情報⇒ケブザラ くすりのしおり

(iii) T細胞という白血球の働きを抑える

① オレンシア

免疫をつかさどるTリンパ球(T細胞)の働きを抑えます。感染症の副作用が他の生物学的製剤と比べて少ないとの報告があります。皮下注射の場合は、投与初日に負荷投与としてオレンシア点滴静注用製剤の点滴静注を行った後,同日中 に本剤 125mg の皮下注射を行い,その後,本剤 125mg を週 1 回,皮下注射します。また,本剤 125mg の週 1 回皮下注射から 開始することもできます。自己注射可能。点滴製剤の場合は成人には以下の 用量を 1 回の投与量とし点滴静注します。初回投与後,2 週,4 週に投与し,以後 4 週間の間隔で投与を行います。体重によって使用量が異なります(1バイアル250mgです。体重60kg 未満 500mg=2 バイアル、 60kg 以上 100kg 以下 750mg =3 バイアル、 100kg を超える 1g =4 バイアル となります)。点滴で行う場合は、投与時アレルギーであるインフュージョンリアクションに注意が必要です。

詳しい情報⇒オレンシア 患者さんとご家族の方へ

 

生物学的製剤の使い分けについて

使い分けとして、必ず守らなければいけない決まりはありませんが、皮下注射か点滴かの選択、コスト的なこと、メトトレキサートが併用できるか、妊娠の予定があるかなどでご相談の上決めていきます。コスト的メリットがあるのはアクテムラとバイオシミラー製剤(エタネルセプトBS、アダリムマブBSなど)となります。メトトレキサートが併用できない場合はアクテムラ、オレンシア、シンポニー100mgなどをお勧めすることが多いです。妊娠をご希望される場合や妊娠中はエンブレルかシムジアの使用をお勧めします。また、肺などが悪く感染症のリスクが高いと思われるときはオレンシアをお勧めしています。

★バイオシミラー(BS)について

生物学的製剤のジェネリック医薬品といえます。先発品と全く同じではありませんが、先行バイオ医薬品と同等・同質の品質・有効性・安全性を有する医薬品です。先発品より安価になります。現在はレミケード、エンブレル、ヒュミラのバイオシミラーが発売されています。

詳しい情報⇒バイオシミラーとは

(3)JAK阻害薬(新しい経口免疫抑制剤)

JAK(ジャック)とは免疫細胞の中で、炎症を引き起こすシグナルを伝える役割を担います。その働きを抑えることで炎症を妨げます。抗体製剤ではなく化学合成物です。すべて経口剤で毎日服用するのが特徴です。現在5種類ありますが、最初に発売されたゼルヤンツの本邦承認日が2013年3月です。最後のジセレカが2020年9月です。まだ新しい薬で市販後の全例調査が終わっていない薬もあります。

使用のタイミングはメトトレキサートの効きが悪いときに使用を考えます。単剤もしくはメトトレキサートとの併用で使用します。JAK阻害薬は生物学的製剤との併用はできません。肺や腎臓などの合併症などでメトトレキサートが使えない場合は、やはりJAK阻害薬も使うことは推奨されていません。使用のタイミングとして、メトトレキサートが無効な場合に次の薬として使うこともできますが、今のところ生物学的製剤を使ってみてそれでも効果が弱いときに使う場合が多いです。

副作用としては、《どの薬にも共通する起こりえる副作用》《免疫抑制剤の副作用》でお示しした副作用に加えて、帯状疱疹が多いことが報告されています。(当院では、50歳以上の患者様に不活化型帯状疱疹ワクチン、シングリックスの接種が可能です。2ヵ月の間を開けて2回接種します。1回19,000円となります。)

《発売順に》

① ゼルヤンツ(トファシチニブ)

5㎎1日2回服用。薬の排泄は肝臓主体です。併用できない薬は、生物学的製剤、他のJAK阻害薬、タクロリムスなどの他の免疫抑制薬。併用注意薬としてCyp3A4阻害薬・誘導薬(後述)となります。

詳しい情報⇒くすりのしおり・ゼルヤンツ

② オルミエント(バリシチニブ)

4㎎(2㎎)1日1回服用。薬の排泄は腎臓主体です。併用できない薬は、生物学的製剤、他のJAK阻害薬です。併用注意薬としてプロベネシドはOAT3を阻害することにより、本剤の血中濃度を上昇する可能性があるため、本剤にプロベネシドを併用する場合は、本剤の減量を考慮します。

詳しい情報⇒オルミエント・治療を始めるあなたへ

③ スマイラフ(ペフィシチニブ)

150mg(100mg)1日1回服用。薬の排泄は肝臓主体です。併用できない薬は、生物学的製剤、他のJAK阻害薬です。本剤は、CYP3A4阻害作用を有しています。CYP3A基質であるタクロリムス(Tac)との併用で、やむを得ず併用する場合は、Tac濃度が上昇する可能性があるので、Tac併用時には、Tac濃度やTacの副作用に注意します。ミダゾラムなどCYP3A基質となりうる薬剤の併用にも注意することとなっています。

詳しい情報⇒くすりのしおり・スマイラフ

④ リンヴォック(ウパダシチニブ)

15mg(7.5mg)1日1回服用。薬の排泄は肝臓主体です。併用できない薬は、生物学的製剤、他のJAK阻害薬、原則的にタクロリムスなどの他の免疫抑制薬。併用注意薬としてCyp3A4阻害薬・誘導薬(後述)となります。なお、CYP3A基質であるタクロリムス(Tac)との併用でTac濃度が上昇する可能性があるので、やむを得ず併用する場合は、Tac濃度やTacの副作用に注意します。また、ミダゾラムなどCYP3A基質となりうる薬剤の併用にも注意することとなっています。

詳しい情報⇒リンヴォックを服用される患者さんへ

⑤ ジセレカ(フィルゴチニブ)

200㎎(100㎎)1日1回服用。薬の排泄は腎臓主体です。併用できない薬は、生物学的製剤、他のJAK阻害薬、タクロリムスなどの他の免疫抑制薬です。併用注意薬は、本剤及び代謝物であるGS 829845 は P-gp の基質 であり、強力なP-gp阻害薬であるイトラコナゾールなどの併用では本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、患者の状態に応じて本剤100mg 1日1回の投与を考慮すること。また、強力なP-gp誘導薬であるリファンピシンなどとの併用では本剤の血中濃度が低下し、効果減弱のおそれがあるので、疾患活動性の変化をモニタリングすること。となっています。

詳しい情報⇒ジセレカ錠服用ガイドブック

※ゼルヤンツとリンヴォックはCYP3A、及び一部CYP2C19により代謝されます。

CYP3Aの代謝阻害作用のある薬剤(マクロライド系抗生物質、ノルフロキサシン、アゾール系抗真菌薬、カルシウム拮抗薬、アミオダロン、シメチジン、フルボキサミン、抗HIV薬、テラブレビルなどのC型肝炎抗ウイルス薬、フルコナゾール、タクロリムス、シクロスポリンなど) と併用する場合には、ゼルヤンツやリンヴォックの効果が増強される可能性があるため、本剤を減量するなど用量に注意します(ゼルヤンツであれば5mgを1日1回に、リンヴォックであれば1日15mgを7.5mgに減量など)。

一方、CYP3A4誘導薬(抗てんかん薬、リファンピシン、リファブチン、モダフィニルなど)やセイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品との併用時は、本剤の血中濃度が低下し、効果減弱のおそれがあるので、疾患活動性の変化をモニタリングすることとなっています。

※JAK阻害薬解説は日本リウマチ学会のガイドラインを参考にしました。

JAC阻害薬の使い分けはまだ定まったものがありません。効果にも明らかな差は認められていません。腎臓排泄の薬は腎臓が悪い人は避け、肝臓排泄の薬は肝臓が悪い人は避けるようにします。まだ新しい薬ですので長期的な副作用など不明な点もともありますが、全国的には使用されることが徐々に増えてきています。